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世界一周 – スイス

スイス

 

■第6カ国め:スイス

スイス連邦(Swiss Confederation)

ヨーロッパ大陸の中央、イタリア北西部の北に位置する。1291年にスイス誓約という連邦が生まれた世界最古の共和国ともいわれる。
人口は約770万人で、面積約4.1万平方キロメートルは日本の九州とほぼ同じ。

民族は主にゲルマン民族。

国語はドイツ語(約64%)、フランス語(約20%)、イタリア語(約6%)他。

通貨はスイスフラン。GDPは4946億USドル(2009年)、一人当たりGDPは約67560USドル(2009年)。
水は飲用可能で美味しい。ミネラルウォーターは気にする方を除いて特にいらないと思います。

スイスにやってくるのは初めてのことで、周囲で飛び交うドイツ語に若干戸惑いながら滞在を楽しんでいます。さて、皆さまスイスというとどんなイメージをお持ちですか?アルプスの山々、ハイジ、酪農、金融、時計、永世中立国といったところでしょうか。私もスイスにやって来る前までは、上記のようなイメージをもっていました。

スイス・チューリッヒ

チューリッヒには、航空機の経由地の都合もあって来ましたので、細かくあちこちを見て回るというほどの余裕もなく、皆さまがこの記事をお読みになるころには、フランスのパリに移動してしまっている予定ですが、それでも少しだけ気づいたことをレポートします。チューリッヒにはスイス航空のフライトでしたので、厳密にはスイスに入る前からスイスに触れていました。そのスイス航空の機内で気づいたのは、航空機のシートが優れていることでした。スイス航空のシートは自動車用シートでも有名なレカロ社製で、腰の部分のホールド性やウェスト部の絞込み、背中上部の肩甲骨部のホールド性をなど、安定して座ることに対して最高水準を実現しています。

この高い水準を、コストや重量などの制約が多い航空機のシートで実現しているのですから、基本設計レベルの高さを伺わせ、またそれを採用するスイス航空の見識のようなものを感じました。そういうフライトを終えてチューリッヒに降り立つと、空港のボーディング・ブリッジには、大手銀行のプライベートバンク部門の広告や、高級時計の広告が多く、典型的なスイスが表現されています。これをみて、ああスイスに来たんだな、と実感が沸いてきます。

その後、空港ビル内で歩く歩道を使ったりして荷物受取場までやってきます。少し脱線しますが、この動く歩道のスピードというのは、いわゆるお国柄が表れるところで、今回のスイスや、シンガポールは非常に速く、スピードが求められる金融立国の特徴なのだろうか?と思ったりしました。日本の歩く歩道は、歩かないでくださいと注意されても皆耐えられずに歩いてしまうほど遅いですね。これは、動く機械の上部で人と荷物が運動するわけですから、負荷や寿命を考えると反って非効率になってしまっています。途中には、先の業種の広告やスイスの利便性をアピールするディスプレイがあったことを付け加えておきます。

そうして間もなく荷物受取場までやってくると、非常に整然としたレイアウトになっており、整然とした雰囲気に包まれていました。成田空港と同程度の広さが確保された荷物受取場では、バッグを流すベルトコンベアがスペースに対して斜めに配置されており、レーンの長さが確保されていました。また、各レーンの間にはカートが整然と並べられ、必要に応じて最小のアクセスで利用できるように、またまったく探す手間が不要になるように「可視化」されています。また、荷物受取場の壁はガラスになっており、到着ロビーから内部の様子が見えるようにもなっていました。

一般的に、日本人が荷物受取場のような場所を設計するとき、平面図のように上から(空から)みたイメージで、「何処に」「何を」配置するか考えていきますね。そして、レーンを縦や横に配置する。これは、日本人が100人いたら、90人以上がそのように考えるのではないでしょうか。そして、会議で「まあこれでいいんじゃないか」という、妥当かどうかという基準で結論を出します。もちろん、空港の各施設は設計にあたって様々な要求基準があるでしょうからこんなに単純ではないでしょうが、ここでは思考のプロセスに焦点をあてていただきたいのです。

この点、チューリッヒ空港はどうかといえば、人の流れを意識したレイアウトになっている点が大きな特徴です。すなわち、レーンを斜めに配置することによって、荷物が流れる長さを有効に確保できます。荷物を受け取る乗客は一箇所に集中して混雑することなく荷物を受け取り、必要ならばすぐ近くのカートを利用できます。家族や友人・知人が到着するのを、今か今かと待って空港へやって来た人は、荷物受取場の様子を把握することができます。人の思考や動きを意識した造りになっているのです。

チューリッヒ空港

また、こんなことがありました。チューリッヒはドイツ語圏のようですので、周囲はみなドイツ語です。スイス航空や空港のスタッフは英語を話してくれるので搭乗や滞在には問題ないのですが、外国から来たこちらの質問(目的)に対して、論理的に順序だてて説明するのが印象的でした。これは、会話をしたほとんどすべてのシチュエーションで同じでしたので、こちらの国民性なのかと思います。

いかがでしょうか。何か見えてきましたでしょうか。私は、今回の短い滞在でスイス文化の一端に触れたような気がしています。やってくる前にスイスに対して持ち合わせていたイメージは上記の通り、金融や時計、ハイジといったもので、もちろんそれらはバラバラに独立したものでした。しかし、スイスのなかに入ってスイスに触れてみると、じつはこれらは文化的に一つに繋がっていることを感じます。その答えは「目的思考」と「機能」です。それは、すべては人の流れを基準にハードとソフトが設計されていて全体最適が実現しているということです。時計や金融といった産業は、ハードとソフトでまったく方向性が異なる印象を持ちますが、共通する本質に「機能」があります。時計には時を告げ時間を共有する「機能」が、金融には貨幣を流通させ資産を共有する「機能」があります。

スイスは、これら「ファンクション」の分野で世界最高の信頼を得ることによって、他国からみて無くてはならない国というポジションを獲得することに成功しています。したがって、永世中立国といった政策やポジションが採り得るのは、世界でどの国からも必要とされるという条件が成立してこそ成り立つものだということが分かります。また、スイスはこういったポジションを意図して獲得したのではないかと感じるのです。これは、先の空港の荷物受取場に象徴されるように、ただ荷物を受け取るという目的に対して最適化するのでなく、航空機から降りて空港から国内に入る、という人の流れ全体に対して最適化を図っています。同じことが、金融や時計の分野でもいえるのではないでしょうか。

金融分野において、プライベートバンクのようなサービスは単に貨幣を流通させることを最適化していたのでは、なかなか成立しません。そこは、資産に対する「リスクとリターン」という、使い古され手垢がついてしまって言葉をどれだけ深く考えたか。その結果、確実性の提供がサービスを成立させている。時計の分野において、単に時を告げるだけではなく、ユーザーのライフスタイルや信頼といったところまでどれだけ深く考えたか。その結果、自動車や住宅が買えるような価格が正当化されている。それらが、世界でもっとも進んでいるからこその信頼のように思います。

スイスの機能

スイスに来て「機能」に気づいたのは、どれだけ理想を意識しているか、理想に対するプロセスをどれだけ深く考えているか、そのことでした。あるべき理想の姿をイメージし、それに対して機能という手段をもって全体最適を図り、人に快適を提供する。スイスには、日本人が学べる暗黙知のフロンティアがあるように思います。

 

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